2013年3月 1日
[52]産経国際書会顧問・荒木香心さん(86)
言葉に生命を与える
母親の実家が、坂本龍馬ゆかりの旅館、京都伏見の寺田屋だった。軍人にあこがれ18歳で陸軍航空士官学校に進むが、中国東北部牡丹江で操縦訓練中、終戦になり、軍人への夢はついえた。
復員後、郷里京都の郵便局に勤めた。地元の書家、藤沢赤心(せきしん)の奥さんと職場で机を並べたことから「書」に興味を持ち、一日半紙100枚は書こうと決め、家族が寝静まった後、書きまくったこともあった。
昭和29年、転勤した郵政省(当時)で、書家の藤本竹香(ちくこう)、十鳥霊石(ととりれいせき)に出会う。薫陶を受け、主宰する「同巧会」を核とした書道団体「書の世代の会」の設立にも関わった。38年、職員対象の美術展出品作が「特選」に輝き、「中央でもやっていけるんじゃないか」と自信を得た。
半世紀を超える書歴は、伝統書にこだわり続けた書人生だった。文字は、言葉を記録する符号だが、その符号に「生命」を与えるのが書家ではないか。日々、書との格闘のなか、記録性を超えた、存在感ある書を今も目指したいという。(柏崎幸三)
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