2011年7月 8日
[33]産経国際書会顧問 佐藤志雲(しうん)さん(77)
「好きなことに没頭してきた結果が認められ、ありがたいことです」
9日に開幕する「第28回産経国際書展」で内閣総理大臣賞を受賞する。受賞作の「希望」には、東日本大震災からの早期復興へ願いを込めた。書体は、楷行草篆隷(てんれい)のそれぞれで教えを受けた書家の中でも「最も思い出深い」という昭和書壇の大家、西川寧(やすし)氏から学んだ金文(きんぶん)を選んだ。
明治神宮や日光二荒山神社などから社宝とするべく大作の依頼を受けるほどの実力派。埼玉県深谷市と川口市に書道教室を展開する傍ら、昭和56年から航空自衛隊熊谷基地で講師を務めており、教え子の自衛官は延べ570人に及ぶ。
新潟県村上市の出身。小学校の用務員をしていた病弱な祖母を手伝うため、小学3年から中学を卒業するまで、用務員室に住み込んで冬の通学路の雪踏みなどを続けたという。曽祖父の影響で幼い頃から毛筆に興味を持ち、教員室を掃除するときは、教員の名札の文字を窓ガラスに指でなぞって練習した。
県の職員をしながら定時制高校を出て、本格的に書道を学ぶために国学院大学の夜学部に進学。筆耕で生計を立てながら、西川氏や金田一京助氏らの薫陶を受けた。
夫人で同じ書家の志陽(しよう)さんは小・中学校の同級生。これからも「妻と一緒に後進の指導をしていくのが楽しみ」と笑う。9月には、教え子らが集い熊谷基地の講師就任30周年と今回の受賞を祝う会が開かれる予定だ。(原誠)
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