2012年12月18日
[50]第29回産経国際書展文部科学大臣賞 竹増陽子(62)2月生まれ
前衛書に惹かれ18年
第29回産経国際書展で文部科学大臣賞に輝いた前衛書作品のタイトルはルビ「蕊(しべ)」。花のオシベ、メシベのシベだ。昨年の東日本大震災で多くの命が失われ、悲しみは癒えない。オシベの花粉をメシベが受粉し種となる、その力強く生命の連鎖が繰り返される様を復興への祈りを込めて表現した。女流書家らしく、大胆な筆使いのなかに優しさが同居する。
描いていたイメージ通りの作品にするのに試行錯誤の連続だった。裏話を一つ挙げれば、「作品の墨の滲(にじ)みは、気温の低い冬しか出せない」。
書との出会いは、平成6年に広島市の自宅近くにあった舟木(ふなき)江花(こうか)氏の教室に通い出したのがきっかけだった。見たもの、感じたもののイメージを墨の濃淡などで表現する「墨(ぼく)象(しょう)」の世界を知り、無限大の可能性に惹かれた。その後、本部の世(せ)木田(きだ)江山(こうざん)氏にも直接指導を仰ぎ、2010年の国民文化祭で奨励賞、2005年、2012年の広島県展で優秀賞などを受賞している。
書に寄せる気持ちは尽きない。「心に響く作品を目指したい」。意気盛んである。(松本篤幸)
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