2014年2月21日
[62]常務理事・煌心書道会会長 松崎龍翠さん(70)
書の線にこだわる。
「書は線の芸術です。清い線でなければだめ。線を見れば、書家の心が見えてきます。邪念があっては美しい線は書けない、線が澄んでいなければ...。謙虚さや純粋さ、清浄な心があって初めて品位ある書が書けるんです」
書に対する純粋さは、松崎の考えであると同時に師山田松鶴の教えでもある。伝統書に立脚し現代性に主眼を置いた山田は、鶴心書道会を設立。設立と同時に入会した松崎は、37年余、山田の指導を受けてきた。その縁もあり、鶴心書道会の後継団体として昨年5月に発足した「煌(こう)心書道会」の初代会長を務める。
書の原点は、小学5年の寒い冬に書いた書「雪のふる夜」だ。念願かないやっと通えるようになった故郷福島県浪江町の浪江神社宮司、高橋史行(しこう)の書塾。高橋は、ひびきれのある松崎の小さな手を包むようにして教えてくれた。
書の「道」は、長く果てない探究を継続した者だけが知る、深遠で敬虔(けいけん)な清浄な道、と信じる。「私は、書家の到達点は『養拙(ようせつ)』にあると思う。円熟の境地を示す言葉で、一見素朴だが感動を与える書ということ」。そのために松崎は日々精進する。(柏崎幸三)