2012年9月24日

[47]産経国際書会参与・岡美知子さん

「いづくにか 船(ふな)泊(は)てすらむ...」(高市連黒人、万葉集1巻-18)
万葉仮名にこだわる
岡美知子さん
万葉集歌を仮名交じりの平安仮名で書くことに長い間、違和感があった。「歌と文字は、同じ時代を生きてきたのでは」。その疑問が確信に変わったのは、万葉集歌を万葉仮名で書いた時だった。ピタッときた。やはり万葉集は万葉仮名で書かなければ。

洗練された平安仮名と違い、一字一音の万葉仮名は荒々しく原始的だ。ここにこそ万葉の歌人の情熱が現れている。それを平成20年の歌木簡の発見で再び確信した。以来、万葉仮名にこだわる。

8月に東京・八重洲で開いた個展。万葉仮名の書の前で長く沈黙する外国人の姿があった。「文字を読むのではなく、根源的に、感覚的にわかる書」。書の理想をこう考える岡は、世界中の人々に感じてもらえる書を生み出したいと願う。絵画や彫刻と違い、漢字のように整理されたものは西洋人に芸術品として認められにくいと考えるからだ。

そして、日々自分に課すのが「書を行ずる」。書をとことん突き詰める。学恩を受けた書家、手島右卿の言葉でもある。(柏崎幸三)