2010年11月26日

産経国際書会副会長 山下海堂(かいどう)さん(73)

日中の本道貫く存在

 「文字の意味するところを文字の形からもイメージできるように表現できたらいいな、と思いますね」

 書道界で「日本と中国の書の忠実な本道を行く点で、貴重な存在」と評されている。今の世相を表す言葉を六朝(りくちょう)書などに求めつつも、型にこだわらず、テーマに最もふさわしい書体を選んで書き上げる。

 宮城県雄勝(おがつ)町(現石巻市)の生まれで、子供のころから書や絵が得意だった。周囲に芸大進学を勧められたが、経済的な理由からかなわず、東京の美術工芸会社に就職。もっぱら、建設機械の車体などに社名やマークを描く仕事をした。

 30歳を前に、埼玉県川越市に「宮城工芸」を創業して独立。地元の書家に師事して、本格的に書を学び始めると、めきめきと頭角を現した。

 今は商売を長男にまかせて、主宰する「海游舎(かいゆうしゃ)」を中心に書道に専念。中国の書家と定期的に交流する「燕京(えんきょう)書道交流協会」理事長などの要職をこなす。

 次男が作ってくれたホームページには「一文字(ひともじ)書家」とある。「次男坊の造語なんですが、おかげで喫茶店などから『夢』『福』といった書の注文がきます」と笑う。(原誠)