2012年11月26日

[49]産経国際書会常任顧問 永田龍王さん(84)

白楽天「留春不住登城望...」

書は生きる支え、自信に
永田龍王さん
午前4時。100畳の稽古場に運筆の音が広がる。清廉な朝の空気のなか、自由に筆を運ぶ。45年続く日課だ。

NHKのラジオ体操の指導員としても全国的に有名になったが、若い頃から追求してきた「美」。あふれる才能を声楽、絵画、書の各分野で表現していたが、抜きんでたのが書だった。

中学教員時代の先輩の画家、関根将雄氏に言われた。「一つに絞れ」。以来、書一本に絞り、「美」を追求してきたが、そこで見つけたのが書と楽譜の共通点。楽譜の一小節と七言絶句の七文字は同じではないか。文字群と楽譜の共通項だった。音楽が教えてくれた永田独自の書の見方だ。音楽のように書も美しく組み立てていけないか。

一方で、永田自身の書哲学も見つけた。「書とは美だけではない。文字の生活化」。うまく書くことが至上ではなく書く過程の大切さ。書くことが、生活の中に溶け込み、生きる支え、自信になっていく。それが書なのではないか。いま、そう思い続けながら書いている。(柏崎幸三)