2013年9月27日

[58]常務理事・書峰書道会会長 小林静洲(せいしゅう)さん(78)

沖融(ちゅうゆう)
古典から導いた「融通無碍」
小林静洲(せいしゅう)さん
 20歳で始めた書の師は、叔父小林瀞石(じょうせき)だった。書展などない時代、文検取得者の瀞石は、漢字、仮名、篆隷(てんれい)書まで書く名書家。小林は瀞石の書を手本に伝統書の練習を重ねた。

 28歳で、2人目の師、松田海軒に就き、小林の書の世界は広がる。天才肌の松田は日展入選後、南不乗に見いだされ、現代書を書き始める。その影響を受け、小林は、現代書家への道を歩み始める。

 手本らしき手本などない現代書の世界。小林は、現代書の想に詰まると師の作品や古典に目を通しては想を練り直した。

 「大切なことは先人の書を見て自分の中に"気づき"を見つける」。あくまで古典を重視し、そこに、"気づき"を見つけていくのが小林の書哲学だ。

 そして、小林は頑固に自分の字を持たず、作らず、を貫く。円や角へと、さまざまに変化する書に通じる字、固定した字を持たず、作品に合わせて作っていくことに小林は情熱を燃やす。「融通無碍(ゆうずうむげ)」。まさにこれが、小林の書に対する姿勢だ。(柏崎幸三)