2014年6月27日

[66]名誉顧問・臨泉会会長 佐々木月花さん(94)

萬壽無彊(ばんじゅむきょう)
亡き師と歩んだ書歴75年
佐々木月花さん
 「書くだけの人でした」

 今は亡き師であり夫であった書道家の佐々木泰南氏は、家事や育児はもちろんのこと、弟子の書の指導助手から税務署の応対まで、書くこと以外のすべてを月花さんに任せていたという。

 20歳で結婚して今年で75年、この年数はそのまま書歴でもある。一日の日課はまず、泰南氏の使う墨を約1時間半かけてすることだったと振りかえる。

 泰南氏は酒豪としても有名であり、自宅には多くの書道家の仲間や業者が集まった。いつもお酒があり、月花さんの作るおいしいつまみが振る舞われたことは今でも語り草だ。

 そんな多忙な中でも書は続けた。身重や授乳の期間でも半紙の稽古だけは欠かさなかった。書道展に出すような大きい作品はもっぱら夜中に書いた。そんな苦労も考えず、月花さんの作品に辛辣(しんらつ)な批評をした泰南氏を懐かしむ。

 自身3回目の個展「月花の書心展」が東京・銀座の鳩居堂4階で7月1日から6日まで開催される。「きのう きょう」という副題の通り、新作と近作を交えた約40点を展示する。(松本篤幸)