産経国際書会

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避けながら譲り合う「相譲相避」

 私たちが日常使っている楷書という書体は、密集しそうな画の方向や長短を変化させ、重なり合うことを避け、形を整えています。これを「相譲相避そうじょうそうひ」といいます。「林」という字を例にとって説明しましょう。

 篆書てんしょの「林」は、それぞれの画が縦方向に伸びているので、重なり合うことはありませんが、楷書は画が左右に伸びていくために重なり合ってしまいます。そこでこれを避けるために一画目の横画を短く書き、四画目の右払いは点に変化させています。

 これによって、「へん」と「つくり」の間に余白が生まれます。その空いたスペースに左はらいを入れて一体感を出しています。

 小さいことですが、お互いのことを気にかけながら衝突しょうとつを避けています。社会生活の中でも役立ちそうな考え方ですね。

(産経国際書会副理事長 町山一祥)