産経国際書会

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細い木の先端に獣毛をくくりつけ「筆」に

 年末年始は年賀状や書き初めなどで筆を使う機会が多い時期です。そこで今回は「筆」の文字の意味と歴史を追ってみました。

 最も古い文字である甲骨文こうこつぶん(紀元前 13世紀ごろ)に「筆」を示す字が使われています。

 その文字を詳しくみると、①「毛をつけた木か竹」を②「手で持っている」形をしています。現在のような「たけかんむり」はありませんでした。時代が下り、軸に竹が多く使われるようになると、中国・秦代の小篆しょうてん(楷書の原形)では「たけかんむり」を付けた現在の形になり、「筆を使って書く」という意味で使われるようになりました。

 現存する最も古い筆は、中国・戦国時代の楚の遺跡から発掘された長沙筆ちょうさひつと呼ばれるものです。それは細い木の先端を裂いて、獣毛を束ねてくくり付けたものでした。

 また、甲骨文の発生以前、器の内側に筆で人の顔の文様を彩色した土器が出土しています。中国では文字発生以前から絵などを描くために、筆が用いられていたことが明らかになっています。

(産経国際書会副理事長 町山一祥)