結びとめた死者の衣の襟「卒」

3月は卒業式のシーズン。今回は「卒」の成り立ちを見ていきます。
「卒」は「衣」と「十」で構成されます。一説によれば「卒」は死者に着せる死に装束のこと。襟を重ね合わせ結びとめた様子の象形で、死者の霊が外に出ないようにする方法とされます。また、「十」は死者の胸に刻まれる入れ墨。
これらの解釈から「卒」は死を意味するようになり、さらに物事を完成させるとの意味合いも出てきました。「卒業」はその一例です。
一方、「卒」の字は下級兵士を意味し、その字形は10人ずつ兵士を束ねて戦場に送り出す様子とみる説もあります。ここでは「兵卒」などの使い方があります。
ちなみに「卒」の略字「卆」は「九」と「十」で作られており、90歳のお祝いは「卒寿」と呼ばれます。
(産経国際書会副理事長 勝田晃拓)

書・勝田晃拓