離れがたい人のこころ...「愛」

　人(ひと)は多(おお)くの人たちの優(やさ)しさに支(ささ)えられて日々(ひび)を生(い)きています。古代中国(こだいちゅうごく)の思想家(しそうか)、孔子(こうし)は、「論語(ろんご)」の中(なか)で、「仁(じん)は人(ひと)を愛(あい)することだ」と言(い)っています。
　「愛」は篆書体(てんしょたい)で「」と書(か)きます。「」（）は「旡(き)」と「心(こころ)」。「旡」は首(くび)を後(うし)ろに回(まわ)している形(かたち)で、「心」は人の心です。は足跡(あしあと)を意味(いみ)します。つまり、「愛」はその場所(ばしょ)を離(はな)れがたい、ひそかな心を表(あらわ)しているのです。そこから、「愛(いと)しむ」「愛する」などと使用(しよう)されるようになりました。
　何年(なんねん)か前(まえ)、流行(りゅうこう)した小説(しょうせつ)に「世界(せかい)の中心(ちゅうしん)で、愛をさけぶ」という作品(さくひん)がありました。でも、「愛」の本来の意味は、叫(さけ)ぶものとはちょっと違(ちがう)うようです。
（産経国際書会副理事長、髙橋照弘）