神前で声を上げて応答を得る...「詩」

　「詩」という文字(もじ)は、「言」と「寺」で構成(こうせい)されます。「言（）」は、神(かみ)に誓(ちか)いを立(た)てて祈(いの)る言葉(ことば)。「寺（）は上(うえ)の篆書(てんしょ)をみるとわかるように、何(なに)かを手(て)に持(も)つかたちを表(あらわ)し、「持つ」という文字のはじめのかたちでした。次回(じかい)に紹介(しょうかい)する「歌」でも、「可」の文字が、杖(つえ)で（サイ）をたたいて、祈り訴(うった)えることをあらわすように、「詩」は、神前(しんぜん)で声(こえ)を上(あ)げて「うた」をうたいあげることにより、神の応答(おうとう)を得(え)るのが目的(もくてき)でした。
　「うた」の内容(ないよう)は、最初(さいしょ)は儀礼(ぎれい)に沿(そ)った決(き)まったものでしたが、後(のち)に人間(にんげん)の心情(しんじょう)をうたうものとなり、人々(ひとびと)を共鳴(きょうめい)させ、やがて文学にまで高(たか)められました。
　「寺」が寺院(じいん)の意味(いみ)で使(つか)われるようになったのは、漢代(かんだい)に入(はい)ってからといわれています。
（産経国際書会常務理事、眞田朱燕）