2019年3月10日
穀物と肉を供え、災いを他に移す...「移」
世界のどこかでは、争いごとで穏やかに生活できない人々が移民となり、他国へ移らざるを得ないという大問題が生じています。上の篆書を見てください。「移」は、禾()=稲などの穀物が実ったかたち=と、多()=肉が重なっていて、たくさんの肉を表すかたち=からできた文字です。
古代中国では、実った穀物とたくさんの肉を神様に供え、災いが他へ移ってくれることを願いました。
そこから「移す」という意味になり、人や物の移動、移築、移住などの言葉ができ、文化の移入、感情移入など、考え方や感じ方などを取り込む表現もできました。
会社などで働く場所が変わったり、地位が上がったりするときは「異動」を使います。「ここからあちらへ移す」という「移動」とは、同音異義語(音が同じで意味が違う)となります。
(産経国際書会常務理事、眞田朱燕)
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