2019年5月19日
人が近づくことのできるギリギリの神域...「限」
来年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、出場を目指すアスリートは日々極限の練習を重ねています。そこで今回は、「限」を取り上げます。左の金文を見てください。「限」は、神霊がのぼりおり(陟降)する梯子の形()が神聖な場所にあって、邪悪な霊が近寄らないよう呪いをかけた作り物の目()を掛けました。それを見て、恐れをなしてスゴスゴと後ろ向きに退いていく人の形()から出来た、まるで物語のような文字です。「ここに入ってはいけません!」という意味で、限界、限定、制限、限度などの言葉ができました。
このように、偏(文字の左側)に置く「阝」(こざと)は、神様の梯子なので、神様に供え物を捧げる意味の「祭」に「阝」(こざと)をつけた「際」は、人が神に近づくことができるギリギリのところ、極限を意味します。一方、旁(文字の右側)に置く「阝」(おおざと)は、形は同じでも、もとの字が邑で、集落のことです。字源が違うとまったく意味が変わってくるのです。
(産経国際書会常務理事、眞田朱燕)
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