[139] 常務理事・書研社 小川艸岑(そうしん)さん(73)

それを機に、父の作品やコレクションを、郷里の千葉県白井市郷土資料館に寄贈。昨年秋、紺綬褒章を受章した。
「代表を離れて2年たち、ようやくほっとした感じがします」と大役を果たした安堵(あんど)感をにじませる。
幼いころから、瓦木の背を見てきたが「父は決して、私に書を強制するようなことはなかったですね。おおらかな教え方で、細かいことを言う人ではなかったです」
自身は、結婚・出産などもあり、本格的に書に向き合ったのは次男が小学校に上がる30代後半になってからで、書の世界には自分の意思で入っていくことになった。
昨年、長年住み慣れた東京都世田谷区から同多摩市に転居した。そのタイミングで、「かな」の勉強を始めたという。
「長く大きなものばかり書いていたので、小さな文字を書くことが楽しい。今まで分かっているようで分かっていなかったんだな、という発見がありますね」と声を弾ませる。
自身が向き合うのは、線の芸術ともいえる墨象(ぼくしょう)。前衛書を、「分かりにくい」という人もいるが、「墨象は心の律動を瞬時に姿に表しているのです。そこから何かを感じることが最も大切」と強調した。
(谷内誠)