2012年5月 1日

[42]産経国際書会常任顧問、全日展書法会会長・龍源齋大峰(りゅうげん・さいたいほう)さん

書業68年、今も心を磨く
龍現齋大峰(りゅうげん・さいたいほう)
3歳の子に筆を持たせたのは「読み、書き、そろばん」の大切さを知る母だった。以来、書業68年。いまでは、台北やソウルで書道展を開く国際的な書家になった。

道のりは苦しかった。自分が描いたイメージ通りに進まない筆。「筆を投げ、硯(すずり)を壁にぶつけたこともたびたびでした」。今でも満足できるまで徹夜で書き続ける。「芸術である書に天(ゴール)はない」と戒める。

「書とは何か」。窮めていくほど、脳裏に浮かぶのは、この疑問だった。書く技術を磨くだけでは飽き足らず、筆、墨、硯、紙の関係を研究した。「筆の毛一本を電子顕微鏡で写し書きをし、硯石の表面や擦った墨の粒子も分析した。墨はどうして紙に浸透していくのか。書の原理を探りたかった。「自分を納得させたい一心でした。書くだけではいけない、なぜそうなるのかを知りたかった」。そんな探究心が一冊の書「書道大家の技法」を著す。

いま得たものは、「技術だけではだめ。書とは、心の表現なのだ。自分の心を磨いていくことこそが、さらに書を高める」。白と黒の芸術である書。さらに高い天を目指し心を磨く。(柏崎幸三)