2012年8月27日
[46]産経国際書会最高顧問・山田松鶴(しょうかく)さん
墨色と字の形の中に表現
いまも書く。嫌うのは、「枯れた書」との評だ。「書の命は、墨色と線。線を切れば、血が迸り(ほとばし)り出るのが書」。そう教えた師、松本芳翠の言をいまも忘れていない。
書いた書はみな、趣が異なる。それは、詩句や文字、創作の時と場により、変えているからだ。大切にするのは、詩情表現。「伝統書の中の現代性を考えたとき、(現代人である)自分なりの心に響いた詩や文字の情感を表現すること、文字性を大切にし、墨色と字の形の中に自分の感慨を表現すること」を第一義に置く。
伝統書としての詩情表現と「発念」したのは約40年前。書線の情感、微妙な墨色の変化、両者のからんだ字形の美、さらには作品の奥に見え隠れする心などが渾然一体となる書。そう書きたいと念じてきた。
だからか、松鶴の書には詩情がある、情景も見えてくる。80歳のときの個展に出品した「廬山煙雨」。この書を見た来場者が言った。「松鶴先生は、中国の廬山に行かれて、この書を書かれたのですね」。最高の褒め言葉だった。廬山など知らぬ松鶴が書いたこの書は、廬山を想起させるに十分だった。(柏崎幸三)
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