2014年12月24日
[72]常務理事・斯華会運営委員 多田游硯(ゆうけん)さん(82)
ありのままの情景を伝える
「書をやっていて良かったことは、とても良い言葉に出合えたこと」自然をうたった漢詩や俳句を題材とし、ほのぼのとした情景が浮かぶような仮名作品の創作を好む。
明治、大正の仮名書道界を代表する大家である小野鵞堂(がどう)が創設した斯華(このはな)会に入門したのは昭和35年。和様の書として漢字と仮名を交え、読んで分かる書を規範とする平明で優美な書風は「鵞堂流」と称され、今日でも、枝分かれした多くの書道団体が活動を続ける。
師の小野成鵞(せいが)氏は鵞堂の四男で2代目。嫁ぎ先が会の本部の数軒先であったのはまったくの偶然で、運命だったと語る。
昭和44年に成鵞氏が亡くなってからは3代目の之鵞(しが)氏らとの書道研究の傍ら、臨書に没頭するようになった。中国の古典から日本の仮名まで、同じ字を繰り返し書くうちに、師の作品の元となった文字を古典から発見し、師の見事なアレンジに改めて崇敬の念を抱いた。
「書は読めなきゃつまらない」とは之鵞氏の言葉。ありのままの情景を伝えるのが書だと確信する。「芸術ではない、習字だと言われても、作品は皆に読んでもらいたいと思います」
(松本篤幸)
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