2015年9月 1日
[80]理事 青柳光草さん(65)
究極のアイデンティティ
「書は究極のアイデンティティと思います」
人の書く文字は、指紋と同じように個人を主張するもので、書き手の深層心理が作品に乗り移るシュールレアリスム的な世界だという持論を展開する。
美術全般に造詣が深く、大学では「美学」を専攻し学芸員の資格を取得。61歳まで美術館に勤めた経歴をもつ。
書道との出会いは職場の人間関係で悩んだ28歳のとき。心配した母親が気分転換にと薦めてくれたのがきっかけという。母親が営んでいた生け花教室のあるビルの隣の部屋が、当時は女流書家として一斉を風靡していた町春草の銀座教室だった。巨匠である春草の「ときめきのある書」に惚れ込み、一生懸命に真似ようと努力したが叱られてばかりだったと回顧する。「全然似てない」「下手ね」という辛辣な言葉が今も耳に焼き付く。
とはいえ、「第13回日本の美・現代女流美術展」に、教室を代表して春草とともに、二人で出品したこという嬉しい思い出もある。
自らを不器用と評する。だから指導者」として、生徒がどこで悩んでいるのかが手に取るように分かるという。心がけているのは丁寧で具体的な指導だ。書を通しての「ときめきのある人生」を自らと生徒に願う。
(松本篤幸)
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