2016年1月29日
[85]常務理事・宏道書会会長 山本晴城さん(55)
古代漢字研究が結実
印章などに使用される篆書(てんしょ)の元となった金文の作品を得意とする。「金文の魅力は造形美にあり、線の強さと余白の美しさが直接的に捕らえられること」という。岐阜や名古屋で活躍していた書道家である故・山本宏城氏を父に持ち、幼少の頃から書に親しんだ。書道教室を手伝う傍らで20代から、地元をはじめ全国区の公募書道展にも参加するようになった。若い頃は通常の楷書(かいしょ)や行草書の漢字作品が主であった。
幅広く書を学んできたなかで、自身の書作活動における研究課題は、原始的な古代漢字に求めた。初期の楷書で荒削りといわれる5、6世紀頃の中国・南北朝時代の「六朝(りくちょう)の楷書」から始まり、時代を遡って木簡に書かれた隷書、そして象形文字の進化した金文にたどり着いたという。
こうした書と文字への真面目な取り組みが実を結び、平成22年には近代詩文書や大字書などの現代書の若手作家を顕彰する「國井誠海賞」に輝いた。伝統書系の作家が受賞するのは異例のことあった。
「まだまだ未完成。遊びのある独自の書のスタイルを創りたい」と語る今後の作品に注目したい。(松本篤幸)