2016年8月 4日
[92]顧問 翠鳳会主宰 森井翠鳳さん(83)
側筆で味わいのある線を
書の話になると止まらない研究家である。筆の穂の側面を用いて書く「側筆」を、普通に書く「直筆」と組み合わせると、深く味わいのある線が創出できるという持論を展開。高名な書家の多くは、この「側筆」を上手く取り入れてきたと力説する。
広島県竹原市の出身で呉市に在住。中学生の頃から旧・国定教科書の執筆者で広島大学教授であった井上桂園に師事し、「側筆」の規範とされている中国古典の王羲之や孫過庭(そん・かてい)の書を学んだことが原点となった。並行して、本拠の大阪から広島に出向いて指導に来ていた桑田笹舟と梅舒摘(じょてき)から、それぞれ仮名と篆刻を学んだ。三人とも著名な書家である。それぞれの技術を吸収し、書作に励んだ。
20代で早くも漢字作品で日本書芸院展の特選を受賞し、二科審査員にも推挙されたが、銀行員の仕事が多忙で本格的な公募展への参加は定年になってからとなる。産経展には初出品の10回展から、2年連続で篆刻作品が産経新聞社賞に輝いた。
現在のもう一つの課題は、「書の気品を高めるべく、余白を美しく表現」することという。「まだ死ねねんよ」と広島弁で言う、その目は輝いた。(松本篤幸)
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