2016年12月23日

[96]産経国際書会常任顧問・新日本書道教育連盟代表・あしで會会長 今口鷺外さん(69)

王蘊之 散豁情志暢
今口鷺外さん
 先師吉井天外の急死で、30代の若さで引き継いだ社中展は今年62回。
産経第31回展で内閣総理大臣賞を受けた今も、「書をもっと大衆に近づくものにしたい」と意欲を語る。

 書の道に入ったのは商社勤務の20歳のとき。師が67歳で亡くなると、兼業で会長を引き受けた。

 「先輩方の方針は解散でした。それではこれまでの免状や弟子の努力がすべて無になる。自然に手を挙げていました」

 幼少から絵や詩文に才能を発揮していたが、書家としては未熟。会を運営しながら技術を磨き、産経第1回展で入選。本業でもトップの売り上げを続け、営業部長を務めた。

 支えになったのが2人の師の教え。名門私立高、灘高校の教師だった天外は、多忙のなか稽古を重ねる今口に、「作品をよく見ろ。むしろ目学問をしなさい」と教えた。勉強の過程で出会った2人目の師、元文部省主任教科書審議官の江守賢治は、「書に限らず、様々なものを見ている姿勢がいい」と認めてくれた。

 天外と江守は幼少時、福井の若越書道会で日本一を目指し競った書友。今口は後に知った奇縁に愕然がくぜんとしたという。
「先人がいて自分がいる。その心を後代に伝えていきたい」(福本雅保)