2017年8月 3日
[103]産経国際書会顧問・東西書芸会参事・光風書院主宰 五十嵐光子(いがらし・みつこ)さん(92)
92歳の現役書家として、東京都美術館で開催中の「第34回産経国際書展」(8月3日まで)には、「万葉集 春の野に...」を出品。8月22日(火)から27日(日)には、銀座清月堂画廊2階で、昭和21年に20歳の時に設立した光風書院創立72周年の記念展を開催する。約40点のうち30点は新作だ。「ここまで来られたのは、藤岡先生と書道のおかげ。継続が一番の力でした」と振り返る。
書をはじめたのは10歳。字が上手だった父の影響だったが、12歳の時、現代最高のかな作家のひとり、藤岡保子の門をくぐったことが運命を変えた。
藤岡は徳川慶喜の姪にあたる旧華族。弟子をとらないことで有名だったが、五十嵐を気に入り、厳しくも優しく指導してくれた。五十嵐自身もそれに応えて、戦争の激しい中も、結婚後も、子どもを背負って藤岡のもとに通い続けた。
師(岡山高蔭)没後、古筆古法帖を学んで書体を確立した藤岡の指導の要諦は、上手下手ではなく、自分のものをつかみとるまで続けること。7人姉弟の一番上で、外豪内柔の五十嵐の気性とも合い、生涯の師として亡くなるまで藤岡を支え続けた。
継続の大切さは、五十嵐の指導の場でも。中央区での書道指導は91歳まで続け、昭和54年から続けた保護司・更生保護女性会の活動で、平成14年には藍綬褒章も受章した。
「若い人と話をするのも勉強。続けていれば必ずものになる。そのための指導を心がけています」と話す。
(福本雅保)