2018年11月22日

[119回] 産経国際書会常務理事・東洋書芸院会長・書研社・太陽社代表 世木田江山(せきだ・こうざん)さん(83)

第34回産経国際書展新春展出品作「倒壊」(縦240×横180センチ)

世木田江山(せきだ・こうざん)さん  伝統的な文字や、時には筆、墨からも離れ、大胆な表現で魅了する現代書。筆の町、広島県熊野町に生まれ、竹澤丹一(江東)の創始した太陽社代表として広島の前衛書道を牽引する。
 「『黒』で『白』を書く、というのが私の考え方。黒は字でも字でなくても良い。師の教え通り、常に新しい表現を模索しています」と柔和な表情で語る。

 その竹澤と運命的な出会いをしたのが、経済的な理由で選んだ広島大学教育学部東雲分校。教員養成の2年制だったが、世木田自身は、卒業後他の仕事に就くつもりだった。
 ところが、従弟の紹介で同大教授の竹澤についたことで人生が変わる。敗戦後、伝統書から前衛に転じ、「自分の真似もするな」が口癖だった竹澤に書を学び、その強い指導で、教職の道へ。その傍ら県美展で入賞、展覧会に出品するようになる。
 「好きで教師になったわけではないので、『書で独立しよう』と、夜も先生のあとをついて指導法を学びました。結局教師は辞めずに大学まで教えましたが...」
 竹澤の死去を受け、平成11年、太陽社代表に。産経展に導いてくれた小川瓦木が創設した東洋書芸院会長に今年就任。産経展では、瀬戸内展実行委員長として瀬戸内の書振興に心を砕く。
 「昨日書いたものは、きょうには古くなる。いつも新しいものの追求です」。
(福本雅保)