2019年5月29日
[125] 産経国際書会副理事長・臨泉会理事長 松井玲月(まつい・れいげつ)さん(74)
昨年から関西展実行委員長に就任。自宅のある奈良を中心に関西の書の振興に心を砕きつつ、会の指導や展覧会で、東京、青森、海外へと飛び回っている。「書道の家で、長兄や長姉は芸術でも他分野に進みましたが、私は不思議と小さいころから『将来は女流書家になる』と思っていた。生涯大事にしている事は、父の口にしていた『書は人なり』の精神です」と話す。
書会元顧問で、昭和を代表する書家、佐々木泰南の、5人兄妹の三女。母は第1回の高円宮賞を受賞し、今年10月に百寿を迎える佐々木月花最高顧問、次姉は内閣総理大臣賞受賞の原田圭泉常任顧問という書道一家だ。だが泰南は、妻、娘には一切手本を書かなかったという。
墨摺りなど、作品を書くときの手伝いで学ぶ「目習い」であとは独学。酒豪で知られた泰南は、自宅に来客を招くと好んで娘を席に呼ぶことも多く、貴重な耳学問となったという。
「父は書道関係だけでなく、様々な分野の方々との付き合いも多かった。人間性を学ばせたかったのだと思う」と振り返る。
そうした縁から200年以上の歴史を持つ奈良の墨運堂に嫁ぎ、いったん父からは離れたが、作品を書くことは諦めなかった。
子どもの手がかからなくなった40歳過ぎから精力的に出品し、産経国際書展、同新春展のほか、モナコ、スペイン、モンゴルなど海外展での受賞も多い。
「父の書が好きで、どうすれば作品に近づけるか日々試行錯誤しましたが、結局、書は自分の人間性の表現と気づいた。奥深いのが魅力です」。
(福本雅保)