2019年10月25日

[130] 産経国際書会常務理事、土筆会会長 上村陽香(うえむら・ようこう)さん (82)

第36回産経国際書展出品作 「梅花の歌」(縦240×横60センチ)
20191024_kanji_2.jpg  桑田笹舟らをうんだ書の町、広島県福山市で、中学時代の恩師、吹抜渓風(ふきぬけ・けいふう)の創設した土筆会を主宰。今年は「瀬戸内海」をテーマに、10月8日から14日まで、ふくやま美術館で第47回展を開いた。
 「『眺めて面白く、読んで味わって、なるほど、というふうに書きたい』と言うのが吹抜先生のモットー。皆で読めて楽しい書を心がけています」と話す。

 生まれは下駄の生産量日本一を誇る同市松永地区。中学生の時、1,3年の担任を務めたのが吹抜師だった。師は桑田笹舟に学び、後に福山誠之館高校で長く教鞭をとった教育書道の重鎮。上村さんは、その板書の美しさにとりこになった。
 書道を習うのはそのときが初めて。放課後、教室の薄暗い明かりを頼りに書き上げた作品を部活の仲間と届けにいくと、電灯一つの職員室で待っていてくれた謹厳実直な師の姿が忘れられないという。
 とはいえ、高校は別になり、書は通信教育で続けたものの、高校卒業、結婚、出産と時は過ぎていった。
 転機は30歳過ぎ。仕事の合間の楽しみに書の指導を受けたいと、近くに住む吹抜師宅に友人が通っているのを知り、念願の指導を受けるように。土筆会展は最初から参加し、産経展には9回展から出品。平成12年、師の死去に伴い、土筆会会長に就任した。
 「遺言で指名されている、と聞きとにかくびっくり。力不足ですが、先生の教えを守って続けています」。
 書会でも今年から瀬戸内展副実行委員長に就任。温厚な人柄で瀬戸内の書を牽引する。
(福本雅保)