2020年12月18日
[138]客員顧問・晋鷗芸術学院院長 晋鷗(しんおう)さん(63)
「書を通じて日中の懸け橋になりたい」と朗らかに語る晋鷗さんは、中国東部浙江省の省都・杭州の近郊、桐郷市出身。少年期から書に親しみ、20代には中国国内の各書展に入選、1991年には上海で個展を開き、「晋鷗書画篆刻選」を出版するなどして腕を上げた。地元の美術館で学芸員として働いていたが、中国を訪れた東京の篆刻専門出版社「三圭社」の三井雅博社長(60)と偶然知り合い、日本に来ることを勧められ、92年に来日。三十路半ばでの挑戦となったが、「中国は伝統重視で、日本のような〝現代書〟がなかったのが、日本に引き付けられた理由のひとつ」と振り返る。日本語学校で言葉を身に着け、妻ら家族を呼び寄せ、大東文化大や東京学芸大で学び、篆刻の実演販売などで生計を立てる日を送った。
三井社長は「常に前向きで、人の輪を作れる人。来日当初はお世話もしましたが、今では大先生になられて逆にお世話になっています」と評している。
晋さんは、「(日中関係は)歴史の中でいろんなことがあったけれど、私は日本のいい面、すばらしい姿をやはり中国に伝えたい。そして、日中双方の書道家、芸術家交流を深めていくことが使命だと思っています」と熱く訴える。
書、水墨画、篆刻―。それぞれに多数の作品を成しながら、同時に日本人、在日中国人の指導も続けてきた。拠点とする千葉県野田市に15年前に「晋鷗藝術館」を開いたほか、郷里にも美術館を設けるなど日中両国の友好に汗をかく。
(谷内誠)